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HACCP義務化と小規模飲食店:本当に必要な対応だけを整理

執筆者 Ludovic Frank 公開日 読了時間 1 分
清潔な厨房で冷蔵庫の温度計を確認しチェックリストに印を付けるシェフのイラスト

「HACCP義務化」と聞くと、認証の取得や高額なコンサルティング契約が必要な印象を受けるかもしれません。実際、検索結果にはコンサルや設備の営業を目的とした記事も多く、必要以上に身構えてしまう店主も少なくありません。

結論から言えば、小規模な飲食店に求められるのは手引書に沿った衛生管理計画と、毎日の簡単な記録です。認証も審査も申請も要りません。かかる費用も原則ゼロです。ネックになるのはお金ではなく、営業で忙しい中で記録を続ける時間のほうです。電話対応を減らすために予約受付を無料の予約システムで自動化するなど、日々のオペレーションを軽くして記録の習慣を守る工夫とセットで考えると現実的です。

この記事では、法律上の位置づけと、実際にやるべき作業だけをコンパクトに整理します。

HACCP義務化とは:2021年6月から全事業者が対象

食品衛生法の改正により、2021年6月1日から、原則すべての食品等事業者に「HACCPに沿った衛生管理」が義務化されました(東京都「食品衛生の窓」)。飲食店も例外ではありません。

ただし、制度には2つのレベルがあります。

  1. HACCPに基づく衛生管理:大規模事業者や食肉処理業などが対象の、本来の7原則12手順に沿った管理
  2. HACCPの考え方を取り入れた衛生管理:小規模な営業者等が対象の、簡略化されたアプローチ

小規模飲食店は「考え方を取り入れた衛生管理」でよい

食品衛生法施行令に規定される「小規模な営業者等」には、飲食店営業者がそのまま含まれます(このほか喫茶店営業、そうざい製造業、食品の取扱いに従事する者が50人未満の小規模事業場など)。つまり、一般的な飲食店は簡略化されたアプローチで対応できます。

重要なのは、東京都の案内にも明記されているとおり、認証・承認・届出といった手続きは不要という点です。「HACCP認証を取らないと営業できない」という説明は誤りで、第三者認証は取引先の要求などがある場合の任意の選択肢にすぎません。義務なのは認証ではなく、計画・実施・記録という日々の運用です。

やることは3つ:手引書・計画・記録

1. 業界の手引書を入手する

厚生労働省が業種別の手引書一覧を公開しています。一般的な飲食店向けは、日本食品衛生協会作成の「小規模な一般飲食店事業者向け」手引書(2024年1月改訂)。記録様式もセットで付いており、そのまま使えます。

2. 衛生管理計画を作る

手引書の核心は、メニューを加熱の有無で3グループに分けることです。

  • 加熱しないもの:刺身、サラダなど(低温管理がポイント)
  • 加熱するもの:焼き物、揚げ物、炒め物など(中心部までの加熱がポイント)
  • 加熱後に冷却・再加熱するもの:カレー、スープの作り置きなど(冷却スピードと再加熱がポイント)

自店のメニューをこの3つに当てはめ、それぞれのチェック方法を決めれば、計画の大枠は完成します。一度作れば、メニューが大きく変わらない限り作り直しは不要です。

3. 毎日の記録をつける

日々の作業は、原材料の受入確認、冷蔵庫・冷凍庫の温度確認、従業員の健康チェックなどを記録表に付けて、確認者がサインするだけです。1日あたり数分で終わる作業ですが、続けることに意味があります。2024年1月の手引書改訂では「毎月の振り返り」の様式も追加されました。

ありがちな失敗は、繁忙期に記録が途切れ、そのまま習慣が消えてしまうことです。食品衛生責任者を記録の責任者に決め、閉店前のルーティン(レジ締めなど)とセットにしてしまうのが定着のコツです。

保健所にはいつチェックされる?

計画や記録は、保健所の監視指導や営業許可の更新時に確認されます。開業時の許可申請でも衛生管理計画について聞かれるのが一般的です(開業手続きの全体像は飲食店開業の流れにまとめています)。

記録がない場合、直ちに罰則ということではなく、まずは指導・助言から入るのが通常の運用です。ただし指導に従わず改善が見られない場合には、食品衛生法に基づく行政処分につながる可能性もあります。数分の記録で避けられるリスクと考えれば、対応しない理由はありません。

よくある質問

HACCPの認証やコンサルタントは必要ですか?

不要です。小規模飲食店に求められるのは手引書に沿った計画・実施・記録であり、認証・承認・届出といった手続きはありません。認証の取得は、取引先から求められた場合などの任意の選択肢です。

記録は紙でもいいですか?

紙で問題ありません。手引書に付属の記録様式を印刷して使うのが最も手軽です。アプリで管理しても構いませんが、形式より継続が重要です。

家族だけで営業する小さな店も対象ですか?

対象です。義務化は規模を問わず全事業者が対象で、飲食店営業者は規模にかかわらず簡略化されたアプローチ(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)で対応できます。

手引書はどこで手に入りますか?

厚生労働省のホームページに業種別の手引書一覧が無料で公開されています。一般的な飲食店は日本食品衛生協会の「小規模な一般飲食店事業者向け」手引書を使えば十分です。

記録を付けていないとどうなりますか?

保健所の監視指導時に指摘され、まずは指導・助言を受けるのが一般的です。改善しない場合は行政処分の可能性もあります。開業・許可更新の場面でも確認されるため、日々の習慣にしておくのが安全です。

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